EDITORIAL REPORT
編集部レポート
観光だけじゃない!“住むように過ごす”庄原さとやま留学「お試し留学」

観光だけじゃない!“住むように過ごす”庄原さとやま留学「お試し留学」

18~29歳の若者を対象に、庄原のリアルな仕事と暮らしを体験してもらう「庄原さとやま留学」。今回は、口和地域で開催された2泊3日の「お試し留学」の様子をレポート!
同行した2日目の様子を中心に、参加者の声などをお届けします。

庄原さとやま留学「お試し留学」とは?

庄原に興味のある人、応援したい人がつながり、庄原を楽しむためのコミュニティ「庄原ファンクラブ」。同団体が牽引し、2024年から始まったのが庄原の仕事と暮らしを体験してもらう「庄原さとやま留学」です。
2泊3日の「お試し留学」、2週間の「インターン」、1年間の「留学」の3つのプログラムが用意されていて、18~29歳までの若者が目的に応じて参加できます。最終的には移住・定住を見据えてのプログラムですが、まずは庄原を好きになってもらおう!関係人口を増やしていこう!というのが目的です。

 

スタートして3年目となる2026年は、お試し留学を6地域で開催。8月7日(金)~9日(日)にかけて行われた口和地域のお試し留学に同行しました。

口和地域お試し留学のレポート

今回お邪魔したのは、2泊3日のうちでもメインとなる2日目。フリースクール「スイス村」での里山仕事体験と、「たなべ牧場」での牧場体験が用意されています。

まずは簡単に、留学生(参加者)のご紹介。

●石田千夏(いしだ・ちなつ)さん
神奈川から参加の大学3回生。時間があれば緑のある場所へ足を運ぶくらい自然が好きで、以前にも他地域で開催されている農業体験に複数回参加してきたそう。

大学ではジェンダーや貧困の問題を学んでいるとのことで、ストリートチルドレンなどの課題を海外で目にし、「日本の課題はなんだろう?」と考えるようになったそうです。「外から見た日本という視点がほしくて、国内外いろいろな地域を訪れるようになりました」と話してくれました。

●梅田滉基(うめだ・こうき)さん
岡山から参加の社会人。大学時代は食品の勉強をしていたそうで、自然や農業に興味あり。石田さんと同じく、学生時に他地域の農業体験プログラムにたびたび参加していたとのこと。
「これまで畑仕事などの農作業を多く体験してきましたが、今回の口和地域のプログラムは酪農体験があったことが参加の決め手になりました。畜産にも興味があるので楽しみです!」と教えてくれました。

●ジョ ヨンドさん
東広島から参加の社会人。県立広島大学の出身で、大学生の頃は庄原に在住。卒業時に寮母さんから「庄原を離れるなら、庄原ファンクラブに入ってみて」とすすめられて入会。メールマガジンで庄原さとやま留学のことを知り、ずっと参加したいと思っていたとのこと。
「大学在学中、庄原のまちのことは知れたけど地域の人と親しくなれる機会がなくて。今回は地元の人たちと仲良くなりたいです」とのことでした。

スイス村で里山の仕事を体験

2日目の朝、口和町宮内にある「スイス村」に参加者が集合。庄原ファンクラブのメンバーや「お手伝いしたい!」という地域の有志も含め、数十名が集まりました。
スイス村は、元小学校教員である代表の木原信行(きはら・のぶゆき)さんが1996年に立ち上げた全寮制のフリースクール。全国から集まった子どもたちが、自然と触れ合いながら、さまざまな学びを得られる施設です。
敷地内では豚やヤギ、ニワトリなどを飼っていて、四季折々の草花がそよぐ気持ちの良い空間です。

今回はこちらで、「池の石垣積み」をお手伝い。
もともと池では魚を飼っていて、経年劣化のために石垣が崩れてしまったそう。魚を飼うスペースと、これから力を入れていきたいクレソンの栽培用スペースを分けるため、皆で石を積んでいきます。

木原さんとスイス村スタッフさんの指導のもと、セメント練りからスタート。できあがったら池のそばまで運び、石をひとつずつ積んで合間をセメントで埋めていきます。
「けっこう難しい」「パズルみたい~」と、石田さん&梅田さん。ちなみにこの日の午前、ジョさんは不参加(理由は後述します……笑)。おしゃべりをしながら、和気あいあいと作業を楽しみました。

地域ならではの昼食

ある程度石垣のかたちができたところでお片付け。室内の炊事場へ移動し、昼食準備に取りかかります。外ではスタッフのみなさんが大きな鉄板やテントを用意。イベント感のある設備に、皆がワクワク……!

●この日の昼食メニュー●
焼きそば&チャーハン
鮎の塩焼き
天空豚の焼肉
冷やしきゅうり
夏野菜のマリネ
スイカ

地域食材たっぷりの、豪華なラインナップ……!

梅田さんはおもに野菜を洗ったり、カットを担当。鮎の串打ちをしていた石田さんは、スタッフさんにコツを教えてもらって楽しそう。「焦げやすいヒレには塩を多めにつけるんですって。この塩、化粧塩って言うらしいですよ!」と笑顔で教えてくれました。

準備が整ったら、外に集まってLet’sランチタイム。
スタッフさんが炒めてくれる焼きそばや、天空豚の焼肉に舌鼓。ちなみに天空豚は、スイス村で育てられているブランド豚。広い敷地で放牧で育てられているため、肉質が締まっていて味が濃厚です。塩コショウだけの味付けでも美味!
さらに豚の脂が広がった鉄板で作るチャーハンのおいしさといったら……!空心菜たっぷりでパラパラ具合も絶妙。皆で「おいしいね~」と笑顔になりながらいただきました。
鮎のおいしさに驚いていた梅田さんは、「ふだん自分で魚焼くことなんてないんで、ホント嬉しいし、めちゃくちゃおいしいです!」と感動した様子でした。

食事をしているそばでは、庄原ファンクラブのメンバーが得意のギター&歌声を披露。即興ライブの効果も相まって、和やかかつリラックスしたひと時となったのでした。

たなべ牧場で牧場体験

スイス村の皆さんにお礼を告げて、その後は「たなべ牧場」へ移動。
たなべ牧場は乳牛を育てている老舗の牧場で、三代目を継ぐ田邊賢太(たなべ・けんた)さんと、妻の梢(こずえ)さん夫妻があたたかく出迎えてくれました。午前中不参加だったジョさんも、無事ここから合流。

まずは簡単に、牛舎内を案内してもらいます。賢太さんと梢さんの代になり、新たに取り入れたのが自動搾乳機だそうで、その仕組みや便利さを丁寧に説明してくれました。自動搾乳機には、牛がみずから入って搾乳してもらう仕様になっているそうで、間近でその様子を見てビックリ。
「どうして牛が自分から機械に入るんですか?」という質問に、「お乳をしぼってもらえないのは牛も胸が張って苦しいし、ここに入れば自動でエサがもらえてお乳をしぼってもらえるって覚えてるんですよ。一番最初に入れる時だけ苦労しましたけどね」と教えてくれました。

そのあとはなんと、この日の朝に生まれた(!)という子牛ちゃんとご対面。「小さい!けど、思ったより大きい!」「かわいい~~」「ちゃんと立ってる!」と、みんな大興奮。
生まれたばかりの、けれども強くたくましい姿に、感動を分けてもらえたのでした。

そしていよいよ、お手伝いタイムがスタート。牛舎の端に置いてあるエサを、牛たちが食べやすいように「エサ寄せ」します。至近距離で見る牛は、本当に大きい!
「酪農体験に興味がある」と言っていた梅田さんは、張り切ってエサ寄せをしていました。感想を尋ねてみると、「牛って本当にかわいいですね。とくに目が優しくて」とニッコリ。楽しそうな留学生の様子を見て、田邊さん夫妻も嬉しそうでした。

さらにお次は、生まれたての子牛への授乳作業と、ほかの子牛に電解水をあげる作業。電解水はポカリスエットのようなもので、暑さ対策と水分補給のために夏場はよく与えるのだそうです。
まずは生まれたての子にミルクをあげると、驚くほどよく飲む……!「しっかり飲めるのは元気な証拠。この子にとって初めての授乳なので、皆さんのことをお母さんと思っているかもしれませんね」という田邊さんの言葉に、みんな感激した様子でした。

作業がひと段落したところで、田邊さん夫妻が「少し休憩しましょう」と事務所に案内してくれました。なんとこちらでたなべ牧場直営の「モーモーあいすらんど」で販売されているジェラートを振る舞ってくれたのです……!
どのフレーバーにするかの争奪戦が繰り広げられた(?)のち、ひんやりおいしいおやつをいただきながら、歓談タイムがスタート。
田邊さん夫妻が都会からUターンしてきたこと、牧場を継ぐと決めたこと、酪農について学ぼうと全国の牧場を突撃見学したこと、機械化を進めようと思ったことなど……
話はそこから「都会と田舎の暮らしの違い」や「帰ってきて気付いた庄原の良さ」などに広がり、留学生の皆さんも納得したように話に聞き入っていました。
さらには留学生の皆さんも、今回庄原さとやま留学体験に参加した理由や、普段どのような仕事・活動をしているのかなど、フランクな雰囲気でたっぷりと話ができたのでした。

最後は田邊さんから、「ここで皆さんにプレゼント。今朝生まれた子牛に、ぜひ名前をつけてあげてください」と思いがけず嬉しい提案が……!
「じゃあ最後に顔を見て決めよう!」と皆で子牛ちゃんに再び会いに行き、生みの親である母親のクランちゃんと記念撮影して解散となったのでした。

【1日のスケジュール】
あらためて、スケジュールのおさらいです。
時間 内容
8:30 スイス村
12:30 昼食
13:30 たなべ牧場
17:30 夕食・宿泊

1日目・3日目はこんな体験を実施

現場に同行できなかった1日目と3日目は、担当者さんから伺ったお話をもとに簡単に内容を紹介します。

【1日目:オリエンテーション&地域交流】

留学生が庄原に到着後、地域の仕事を知るために古民家料理店「一柿」などを訪れました。こちらの店主さんは狩猟を行うハンターでもあるそうで、ジビエなどについて学んだとのこと。

メインとなるのは地域交流で、拠点となる体験施設「くちわの家」で晩ご飯づくり。地域の人たちからさまざまな話を聞きながら、一緒に夕食準備を行います。
この日の晩ご飯は、羽釜で炊くご飯に、一柿さんが差し入れてくれたジビエのオードブル(イノシシのつくねや炒め物、鹿の串焼きやゴマ和えなど)、ワニとヤマメの南蛮漬け、鮎の塩焼きなど。
ご飯作りも交流も、はじめましてと思えないくらい盛り上がったそうです。

それを象徴するのが…… 留学生たちはこの日、温泉旅館「鮎の里公園 高瀬の湯」に泊まったのですが、なんと地域のおじさまたちがお酒を持って遊びに来てくれたのだそうです!
いわば、晩ご飯に続いての二次会(笑)。あらかじめ用意された場ではなく、ただの飲み会と化した(?)時間が、留学生の皆さんいわく「最高に楽しかった!!」とのこと。
ちなみに、2日目の午前にジョさんが不参加となったのは、盛り上がり過ぎて二日酔いとなったためだそうです(笑)。

【3日目:機織り体験&とんぼ玉体験】

3日目のメインは、「里呼(りこ)織り工房」で行われた機織り体験と「とんぼ玉工房 Room of Keiko」で行われたとんぼ玉作り。石田さんと梅田さんは機織りに、ジョさんはとんぼ玉作りに挑戦しました。

機織り体験では、さいた布を使う「さき織り」という手法にチャレンジ。不要になった着物や布団などの布を使用する伝統的な織物で、「物を最後まできちんと使おう」という“もったいない精神”から生まれたものだそう。
作ったのは、卓布(たくふ)とも呼ばれるテーブルセンター。それぞれの色合いで織り上げられ、留学生の二人も満足した様子。
とんぼ玉作りから戻って来たジョさんと作品を見せ合う、ほほえましい一幕もあったようです。

 

参加者の感想と今後のお試し留学

内容もりだくさんだった、庄原さとやま留学口和地域の「お試し留学」。留学生の皆さんや、受け入れ側の地域の人たちからコメントをいただいたので紹介します。

●石田さん
「1日目の、地域の人たちとの二次会がめちゃくちゃ楽しかったです(笑)。普段は神奈川で、田んぼを目がけて出かけるくらい緑が好き。ここは周りが田んぼだらけで幸せでした。携帯の電波が届かない時も多々あって、思いがけずデジタルから離れた生活をすることができました。自然と密に、心豊かに過ごせた3日間でした」

●梅田さん
「畜産に興味があったので、牧場での体験がとても貴重でした。畜産って大変なイメージがあると思うんですが、ICT化が進んで便利になってきてるんだということも実感できました。いつか自分も畜産をやってみたいという夢もできました。口和町は星がきれいで、人と自然が共存しているのが良いなって思いました」

●ジョさん
「社会人として働いていることもあり、牧場のさまざまなシステムに驚かされました。普段はデスクでの仕事なので、体を動かして汗をかいて行う農業体験から達成感を得ることができました。大学時代にできなかった“地域の人たちとのふれあい”も存分にでき、本当に楽しい時間でした」

●庄原ファンクラブ メンバー
「若い人をもっと庄原に呼び込みたいという思いで始まった、庄原さとやま留学。少しずつ手ごたえを感じていて、実際に2泊3日のお試し留学に参加した人が、2週間のインターンに申し込むケースも出てきています。今回の留学生が、『Instagramで庄原さとやま留学のことを知った』と言われていて、SNSの効果も実感しているところです」

●留学先となった施設の人たち
「いろんな若い人が来てくれるのは、自分たちもやっていて楽しい。普段気付かされない、外からの視点を教えてもらうこともできると感じています」

「良い取り組みだと思う。もっと広がり、長く続けていってもらえたらと思います」

「庄原に関心を持ってくれることがうれしいです。ここでしかできない体験、日本古来の文化やその土地に息づくなりわいを、来て、感じてもらえたらいいなと思います」

今後の開催予定・申込情報

2026年のお試し留学では、第六回が予定されているのでお知らせです。

●第六回 総領地域 11月27日(金)~29日(日) 開催予定

 

*終わりに*
今回、口和地域のお試し留学2日目に同行させてもらい、「自分の目で見て感じること」って大切だなぁとしみじみ。ホームページやSNSで情報をチェックできても、その場所ならではの景色や気候風土、そこで暮らす人たちのあたたかさ……などは、そこへ行かないとわからないもの。
肌感覚という言葉がありますが、五感でしか感じられないものこそが、「自分にぴったりくる」とか「縁を感じる」みたいなことにつながってくるんじゃないかなぁと思いました。
いつかは庄原に住みたい!暮らしたい!そんな未来につながれば確かに素敵だけれど、まずはここで、いろんな人たちや、さまざまな体験に触れてみてはいかがでしょう。ほかでは得られない時間のなかで、はっと気付かされることがありそうです。