EDITORIAL REPORT
編集部レポート
【NEW OPEN】庄原西城のカフェ「つちのこ邸」夫婦で地域の賑わいを後押し

【NEW OPEN】庄原西城のカフェ「つちのこ邸」夫婦で地域の賑わいを後押し

はじめまして。広島県呉市出身、父の故郷である庄原にIターンしてきた上野です。この度、庄原旅編集部でライターを務めさせていただくことになりました。庄原に移住してきてまだ1年半ですが、すでにこの街や人が大好きになりました。魅力的な場所や庄原の未来をツナグ、素敵な人々をみなさまに発信できたらと思っています!

さて、自然豊かな庄原市西城町の山あいに、ちょっと気になる名前のカフェがオープンしました。 その名も「つちのこ邸」。そう、あの“つちのこ”です。これは実際に行かずにはいられない──そう思い立ち、庄原旅編集部のライターとして早速現地を訪れてきました。今回は、その「つちのこ邸」の魅力をたっぷりとお届けします!

大正時代の古民家を改装したくつろぎ空間



外観は、庄原の風景に溶け込むような懐かしい佇まい。一歩中に入ると、広々とした現代的な空間が迎えてくれます。大正5年に建てられた築110年の古民家は、オーナー・渡部夕紀さんの祖父母の家。長く空き家となっていましたが、大工だったご主人の一平さんや地元の友人たちと1年かけて改装したそうです。きれいになった家を見た親戚に「何か商売でもしたら?」と声をかけられたことがきっかけで、広島市内から本格的に移住し、カフェをオープンすることに。縁側からは里山が一望でき、店内には座敷席とテーブル席がゆったりと配置され、家族や友人とくつろぎながらのんびり過ごせる空間です。

昔ながらの味、でもただ懐かしいだけじゃない
「つちのこ邸」の人気メニューは、日替わり定食と自家製ラーメン。

この日いただいた日替わり定食は、揚げ物をメインに、地元食材を使った副菜、味噌汁、ごはんのセットで1,000円というお得さ。(限定10食なので早めの来店がおすすめです)。さらに、プラス200円で珈琲も付けられます。
この日のメインは、たっぷりのタルタルがのったぷりぷりの海老フライに、ソースがじゅわっと染み込んだサクサクのとんかつ。さらに甘辛ダレが食欲をそそる豚の生姜焼きまで入って、大満足のボリュームです。揚げ物に副菜、ミニデザート…と並ぶお皿の数々に、大人なのにちょっと“お子さまランチ”みたいな気分になって、自然とテンションが上がります。日替わり定食には、地元の方から分けてもらった野菜が使われることも多く、今後は庄原産のネギや卵を取り入れたり、家庭菜園で育てた野菜を使ったりする予定だそう。


そして、私がさらに感動したのは、もうひとつの名物・自家製ラーメン。
ラーメンは単品750円、珈琲付きで900円と、価格の安さにも驚きです。
お店に通う子どもたちからも人気で、「またあのラーメン食べたいわ~」と言いながら帰る子も多いとのこと。このエピソードを聞くと、さらに食べるのが楽しみになります…!いざ食べてみると、口の中に広がるしょうゆベースのコクのあるスープは、どこか懐かしさを感じさせます。「子どものころに食べたことがあるような懐かしい味…このスープは一体なんですか!?」

聞いてみると、料理担当のご主人・一平さんは大工になる前に昔飲食店で働いていたそうで、そのころの経験を元に考案されたのが、この自家製ラーメンなんです。なので、作り方や材料は約30年前のまま「身体が覚えていた」という秘伝のレシピになっています。詳しいことは企業秘密ですが、私はすっかりこのラーメンのトリコになってしまいました。そして、そのスープとよく絡むのが、尾道の製麺所から仕入れている中太の特製麺。何種類か試したのち、つちのこ邸のスープに合う今のものに行きついたそうです。
手づくりのチャーシューも脂っこさがなく、あっさりと食べやすい仕上がりでした。
気がついたらレンゲが止まらず、〆にライスをインしてスープまでキレイに完食(ダイエット中の私には大変危険な一杯です…)。

気づけば人が集まる場に…地元の寄り合い所
左:一平さん(料理長) 中央:夕紀さん(オーナー) 右:神田さん(夕紀さんの叔父)

小中高とこの場所で育った夕紀さんが戻ってきたことで、自然と昔の仲間が集まるように。同級生や近所の人からは「よぉ帰って来たのう」と、歓迎されたそうです。
「正直、最初は自分の意思で帰ってきたわけじゃなかったんだけどね(笑)小学校の時に越してきて、色々思い出があるこの場所に、夫が『戻ろう』って言ってくれて。ありがたいことに昔の同級生もみんな手伝ってくれてなんとかオープンできた」と、夕紀さんは嬉しそうに語ります。
そこから今では「つちのこ邸でちょっと集まろうか」と声をかけ合うようになり、自然と生まれたのが“つちのこ会”。月に一度の集まりでは、地元の行事や暮らしのこと、特産のネギ栽培のことまで話題にのぼり、笑い声が店内に広がります。
「カフェというより、近所の寄り合い所みたいな感じ」と笑う夕紀さん。取材の日も夕紀さんの叔父の神田さん夫婦が来店しており、「こうやってキレイに生まれ変わって、西城の人が集まる場になったのは嬉しいね。オープンの日もとっても賑やかでね」と、目を細めて語ってくれました。
地域の人にとってここは、食事をするだけでなく、ふらっと立ち寄って近況を話せる“もうひとつの居場所”のようです。

カフェなのに“つちのこ”!? 名前の由来を聞いてみたら…


印象的な店名「つちのこ邸」。気になっていた方も多いのではないでしょうか。由来を尋ねると、「最初、名前なんにしようかね…って考えながらここの家の整理をしよったらお母さんの昔の記事が出てきたんよ」と、夕紀さんは店内にある古い新聞記事を持って来られました。それが伝説の生物・つちのこを目撃したというもの。「じゃあ、つちのこ邸にしようか」となりゆきで決まったところ、さらに「実は自分も見たことがある」という声が地元民からぽつぽつと声が上がり始めたそう。「たまたまだけどね。でも何かのご縁よね」と笑う夕紀さん。そして、店内には「つちのこ発見で懸賞金100万円」のチラシが堂々と貼られており、来店客のちょっとした話のタネにもなっています。
思わず「この懸賞金の出どころは?」と聞くと、夕紀さんは「もちろんポケットマネーよ。頑張って稼がんとね」とニヤリ(笑)。
のんびり過ごすだけでなく、「もしかしたら本当に会えるかも…?」とワクワクしてしまいます。

つちのこ邸、まだまだ”お楽しみ”はこれから

「つちのこ邸」の魅力は、これだけではありません。この春、5月のゴールデンウィークには、ご夫婦の共通の趣味でもあるサウナが敷地内にオープン予定。すでにサウナを楽しみにしている方は多く、問い合わせも多いそう。さらに、今後は宿泊スペースの整備やBBQ、カラオケが楽しめる空間づくりも構想中。「比婆牛を使ったBBQもできたら」と夕紀さん。日帰りだけでなく、“泊まって楽しむ”新しい拠点としての今後の展開にも期待が高まります。

「西城の人たちの休憩所のような存在になれたら」と語る夕紀さん。カフェでゆっくり過ごし、サウナで温まり、気がつけば時間がたっている──
そんな心も体もほぐれる場所として、つちのこ邸はこれからも変化し続けていきます。

つちのこ邸の基本情報
住所:庄原市西城町大佐357
営業時間:11:00〜14:00
定休日:水曜
駐車場:有り 6台
アクセス:国道183号から車で約10分