手打ちうどん ゆず
店名に込められた意味が深かった!
日本料理店の「比婆牛うどん」
季節を愛でる、自然の「姿」を大切にする、素材の味を最大限に引き出す、それが日本料理の特徴です。
そんな日本料理に長くたずさわった料理人がうどんを打ってみたら、こんな心に沁みる一杯ができました。中でも一番おすすめしたいのは、「比婆牛うどん」です。
自家製とひと目で分かる、細やかな天かす付き、食べる直前に比婆牛にちょんと振りかけて、お召し上がりください。
「一見、シンプルな肉うどんに見えますが、何か違うんですか?」と聞かれたら、まずお示ししたいのは、「肉」の部分です。
「どうです? 大きいでしょう!」
肉うどんの肉と言えば、こま切れ肉が一般的。
甘辛く炊いてあって、肉の姿も味も分からないということも珍しくありません。それはそれで、美味しいのですが、もはや「日本料理」とは言いませんよね。
手打ちうどん「ゆず」で味わってもらいたいのは、「日本料理らしいうどん」です。
年季の入った雪平鍋に比婆牛を入れ、さっと味を煮含めます。出汁はしっかり、調味料は控えめに。
そうして比婆牛のうま味を最大限に引き出します。
存在感のある肉がドンと乗っていてこその肉うどん。
肉に隠れて見えませんが、アクセントに添えられた人参にもご注目。
取材に訪れた頃、そういえば桔梗の季節でした。抜き型は使いませんよ、手で飾り切りにするのです。秋深まれば紅葉、春が来たら梅、桜。気付く人は気付くし、気が付かない人もいる。それでも季節をあしらうのが日本料理というものです。
この「比婆牛うどん」を作るのは、店主の秋津幸也さん。
うどんを打つのも毎日の日課です。少し讃岐で教わったあとは、自分で納得のいくうどんを追求し続けました。
そして完成したのが今の麺。
讃岐うどんよりはずいぶん、細めですが、モチモチしていてコシがあります。つるんと、自然に出汁と一緒に口に入ってくるので、口内調理と言いますか、口の中で出汁と麺と比婆牛とを噛み混ぜるのに、この細さがちょうど良いのです。
茹で時間は、10分弱くらい。
打ったご本人が、一番良い状態でお出しできるよう、茹で時間を調整してくださいますので、安心してお待ちください。
待つ間、手打ちうどん屋さんにしては、メニューが豊富なものだから、ついつい、「比婆牛コロッケ」や卵とじになった「比婆牛丼」も頼んでみました。
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【タネからすべて手作りの昔懐かしい味】
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【出汁のうま味が利いた卵とじスタイルの牛丼】
お客様に提供し終えたら、秋津さんの緊張の時間は終わり。
リラックスしたとことろで、ちょっと聞いてみたいことがありました。
「あの…… 『ゆず』という店名はどうして?」
「アハハ(笑) それはよく聞かれるんじゃがね。
うん…‥ ユズが好きだから。それもあるし、脇役だけど必要とされるでしょ。
料理を引き立てるためにどうしても。」
なるほど。決して主役にはなり得ないけれども、主役の傍に必要とされる名脇役、ゆず。
季節を表現する「あしらい」でありながら、皮や果汁を味わうことができる名脇役中の名脇役。切り方を変え、彩りと香りを添える名脇役。前菜、椀ものからデザートまで、どこのシーンにも登場できる、実に役柄の広い名脇役。
それは西日本一広い「庄原」という町で、ひっそりと存在感を放つ、まさにこの店のようでした。
店舗情報
店名 | 手打ちうどん ゆず |
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住所 | 広島県庄原市上原町上田2624-1 |
電話番号 | 0824-72-7065 |
営業時間 | 11:00~14:30、17:30~20:00(予約可) テイクアウト有り |
定休日 | 月曜、火曜 |