庄原の地酒とワインショップ
※未成年の飲酒は、法律で禁じられています。

比婆美人酒造

酒造好適米を1本たりとも倒さない!?
硬度51の水で酒と酒米を造る蔵

【全国新酒鑑評会で金賞受賞など受賞歴多数】

 庄原にある蔵元の中で最も庄原らしい名前の「比婆美人酒造」は、
もともと備北地方に点在していた9つの蔵が合併してできた蔵元なのだそう。
 前身は平和酒造といい、合併後の1960年(昭和35)に現所在地の旧称「比婆郡」にちなんで比婆美人酒造と名付けられました。
 9蔵のうちの一つ、西城町にあった蔵で造っていた当時人気の銘柄が「比婆美人」でした。

【代表取締役社長、山本修三さん。御年79歳(2021年3月現在)】

お話を聞こうと事務所の扉を開けると、

「おぉ? 今日じゃったかいの?」

すっかり忘れていたと言いながら、すぐに試飲用のお酒を揃えてくださいました。とってもユーモア溢れるお人柄の山本社長。
 前職は異業種の製造に携わり工場長をされていましたが、元々のご実家が比和町の造り酒屋だったこともあり、酒造りには人一倍思い入れがあります。

用意していただいたのは比婆美人酒造を代表する4種の酒。

【左から大吟醸酒、純米生酒、本醸造上撰の「快」と「比婆美人」】

 看板酒はやはり上撰酒。上撰とは、日本酒の酒税を決める際に使われた級別制度の名残りです。かつて日本酒は、アルコール度数や酒質によって「特級」「一級」「二級」という等級で区分されていました。それによって税率が決まっていたのです。しかし実際の酒質と区分が合致しないことも多かったため、この等級制度は廃止されました。代わって「大吟醸」「吟醸」「純米酒」「本醸造」といった基準ができました。これは精米歩合や製法による区分なので、品質をランク付けしたものではありません。
 一方で、それまで「特級」「一級」「二級」という等級を目安に購入していた消費者にとっては、何を基準に選べば良いか、分かりにくくなってしまいました。そこで蔵元が独自の基準で「特撰」「上撰」「佳撰」などと表記するようになったのです。
 比婆美人酒造でいう「上撰」とは、毎日飲めるうまい酒のこと。リーズナブルで親しみやすい味わいのお酒を造っている蔵元です。

【広島市中区の酒屋「大和屋酒舗」の大山晴彦社長】

【「快」は比較的新しく、比婆美人酒造にしては珍しい辛口の酒】

【ひとたび酒の話になると、真剣な面持ちで熱心に語る山本社長(右)】

「これは燗でも冷でも両方いけそうですね。」

実は山本社長がここを引き継いでから、酒の味も少しずつ変えていきました。そして全体的に甘口と言われていた比婆美人酒造に初めて辛口を誕生させたのです。 それが本醸造上撰クラスの「快」です。

「これは非常にキレが良い!」

大山社長の「キレが良い」という言葉に大きく反応する山本社長。

「うちはね、水が良いからですよ。中硬水、硬度51です。」

広島県内で中硬水の地域は珍しく、やはり日本酒造りに水は大きな影響を与えます。
 水にはカルシウムイオンとマグネシウムイオンなどのミネラル成分が含まれています。水1000ml中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表わした数値を「硬度」といいます。カルシウムとマグネシウムを多く含む水が硬水と呼ばれます。この成分はその土地の地盤、自然環境によって決まります。
 硬水に含まれるカルシウムやカリウム、リン酸などは日本酒の酵母の働きを助け、もろみの発酵を促すそうです。硬水で仕込むと、発酵期間は比較的短く、酸の多めな酒になりやすいと言われています。一方、中硬水だとそれよりもやや発酵に時間を要しますが、硬水よりはやわらかく、酸が少なめで淡麗な味わいの酒ができると言われています。山本社長が目指す酒造りには、ここ庄原の中硬水の水がぴったりハマったということなのでしょう。

 水に次いで酒の味を左右する原料は酒米です。ここでは、山本社長自らが酒米を栽培されているのだそう。

酒造りに適した米は、「酒造好適米」といって、私たちが通常食べるお米とは違います。
稲のときから通常の米の稲よりも背が高いので、不安定で倒れやすいのです。もし倒れてしまって、穂が水に浸かってしまうと、籾が発芽してしまい、収穫もできなくなってしまいます。
 多くの農家では、酒米の栽培にはあまり積極的ではありません。
ところが山本社長が育てる酒米は、1本たりとも倒れないというのです。堆肥も通常の米と同じではないそうです。どうやったら、倒れない酒米を育てることができるのでしょうか!?

【自分で育てた米を確認する山本社長】

そう聞くと、得意気な笑顔を見せて…… 教えてはくれませんでした(笑)。

その倒れない米は、酒と同じこの地の水を使って育てた米です。

水と米、日本の食文化を象徴する二大原料です。そして日本酒の原料でもあります。日本酒は、日本の文化そのものと言ってもいいかもしれません。そのことを山本社長が意識されているかどうかは分かりません。でも比婆美人酒造は、水と米にこだわりをもった、温かい人間味のある蔵だったのです。

店舗情報

店名 比婆美人酒造
住所 広島県庄原市三日市町232-1
電話番号 (0824)72-0589

取材・文/平山友美

未成年の飲酒は、法律で禁じられています。