たかのキッチン(道の駅たかの)

素材の味がそのまんま!
222日通っても飽きないジェラートショップ

広島県内でも人気の道の駅といえば、ここ「道の駅たかの」。中国山地のど真ん中、中国やまなみ街道の高野インターチェンジを降りると、すぐに赤いりんご色の建物が見えてきます。いつ来ても賑わっているのは、地元の人も日々の買い物に利用しているから。地元の人が毎日通っても楽しい、それが「道の駅たかの」なのです。

 そんな「道の駅たかの」でしか味わえない「必食の価値有りメニュー」はいくつもありますが、まずは「たかのキッチン」のジェラートをご紹介します。今の時期(2月取材)はどんなジェラートが待っているのでしょうか。 

【庄原の季節ごとの食材を使うジェラートなので、行ったその時の「旬」を食べてほしい。このほかにもまだまだ……数えたら22種類ありました!】
【庄原の季節ごとの食材を使うジェラートなので、行ったその時の「旬」を食べてほしい。このほかにもまだまだ……数えたら22種類ありました!】

「このジェラートの機械だけはね、ホント、かなりこだわって導入したんですよ。やっぱり素材感がしっかり出るようなジェラートを作りたくてね。ジェラートの本場、イタリア製です。」
展示会などで色んなジェラートメーカーを検討した結果、「どうしてもコレが良い!」とかなりこだわって高野にやってきた機械だそう。
 道の駅たかので本部長を務める井上啓さんと広報担当の宮口佳祐さん、「キッチンたかの」でがっつりジェラート製造にも関わっている日南住(ひなずみ)結さんの3人にお話をうかがいました。

【左から日南住さん、宮口さん、井上さん。これまでのジェラート開発秘話を聞いていると、面白くて笑いが止まらず……!】※撮影時のみマスクを外しています。
【左から日南住さん、宮口さん、井上さん。これまでのジェラート開発秘話を聞いていると、面白くて笑いが止まらず……!】※撮影時のみマスクを外しています。

 そもそも、ジェラートとはイタリアのアイスクリームのこと。日本では「アイスクリーム」と呼ぶには、乳固形分15%以上でそのうち8%は乳脂肪でなければならないと決められています。イタリアのジェラートは、乳脂肪が5%前後であることが多いので、日本の基準に当てはめるとアイスクリームではなく「アイスミルク」に分類されます。アイスクリームよりも乳脂肪分は少なくてちょっとカロリー控えめなイメージですよね。
でも乳脂肪が少ない分、主材料の風味がより重要になってきます。ごまかしがきかないので、素材の味を引き出す工夫が必要です。例えば、栗はいったん、シロップ煮にして栗にしっかり甘味を入れてからペーストにする、それからゆっくりジェラートにしていきます。柚子はもともと乳製品と相性が良いわけではないので、柚子ミルクにするためにはどちらの風味も残すよう配合を決めるのはとても大変です。素材の味を出すということは、素材ごとに作り方、配合を考える必要があるので、通り一遍のマニュアルに従って作ればいいというものではないのです。

【食べ比べると、どれも素材の味がしてビックリ】

 キウイやりんごはシャーベットっぽい仕上がり。キウイは粒々も入って見た目もまさにキウイですね。りんごは、高野りんごのジュースから作っているそうです。「たかのりんごのジュース」といえば、かなりの人気商品。生産量こそ限られていますが、年間平均気温が10.6℃という高野の冷涼な気候が青森県や長野県など日本有数の産地に負けない美味しいりんごを育ててくれます。ジェラートもまさにりんごの味!

 一方、バニラや柚子ミルク、さつまいもなどは、ミルキーな仕上がり。これは素材によってシャーベットっぽい仕上がりにするか、ミルキーな仕上がりにするか、配合を変えながら何度も試作をして決めていくのだそうです。

 毎朝、農家さんたちがとれたての野菜や果物を持ってくるので、野菜売場も活気のある道の駅たかの。年によっては、とれすぎて困ってしまうことや見た目が悪いというだけで売れ行きが悪いものもあります。そんな野菜や果物を積極的に使って、美味しいジェラートに生まれ変わらせることができたら、お客さまにも農家さんにも喜んでもらえる、そんな想いで始めたジェラート作りです。実際にプラムやぶどうなど、捨てるしかないと気持ちが沈んでいた農家さんに「捨てるくらいならジェラートにしてみようよ」と声を掛けたら、とっても美味しいジェラートになり、お客さまにも大好評だったという、うれしいエピソードも。

【お客さまにも農家さんにも喜んでもらえるのが本当にうれしいと語る道の駅たかののみなさん】
【お客さまにも農家さんにも喜んでもらえるのが本当にうれしいと語る道の駅たかののみなさん】

22種類、いや、もっとあるかもしれない? 
こんなにたくさんの種類のジェラートのほぼすべての材料が庄原産の食材でできているなんて、自慢できますよね。
 野菜や果物だけでなく「バニラ」に使っている卵も庄原のもみじたまご(※)ですよ。

 原料の牛乳も「たぶんきっと、庄原産」。県北一帯の酪農家の生乳を集めて牛乳にしているので、高野牛乳や庄原牛乳のように地域を限定することは難しいのですが、県内で一番、生産量が多いのが庄原なので、庄原産の生乳がたくさん含まれているであろうという希望的観測を踏まえて「たぶんきっと、庄原産」と申しておきましょう。

※もみじたまご・・・多くの卵は海外で育種改良されている親鶏から生まれたものですが、日本国内で日本の風土に合うように育種改良された「純国産鶏もみじ」から生まれた卵を「もみじたまご」と呼びます。庄原は卵の生産量も県内一で、ここでは庄原で育てられている「純国産鶏もみじ」から生まれた卵を使っています。

【「香茸ジェラートは?」という提案がありましたが、日南住さんは応えてくださるでしょうか!? 】
【「香茸ジェラートは?」という提案がありましたが、日南住さんは応えてくださるでしょうか!? 】

「これまで、作ったけど失敗したジェラートってあるんですか?」
「ありますよ!……例えばキュウリ! スイカもイマイチでしたね……」
キュウリやスイカは、特有の匂いが出るし、ミルクとの相性が良くないのか、納得いく味にはならなかったそうです。
「他には? 高野なら大根ジェラートとか!?」
「・・・」
大根ジェラートは? との問いには、一瞬の沈黙が(笑)。
「やってはないんですけど……たぶん美味しくないです」
野菜は、ほうれん草のように上手くいくものもありますが、なかなか美味しいものにはなりくいのが現実だそう。

「トマトは美味しいですよ! おすすめです。でもね、トマト嫌いの人は食べられません。だって本当にトマトの味がするから(笑)」

ジェラートに変身させても、トマトの味がそのまま。

だから、このジェラートでトマト嫌いを克服しようとしても無駄なようです。

ここで!「庄原なら『香茸ジェラート』にも挑戦してほしいね!」というお客さまの声が。

 香茸は、全国でも一部の山でしかとれないという超レアな天然きのこです。収穫できる時期もわずかで、取れる量もわずか。庄原では取れたときに干すなどして保存しておき、正月や祝い、もてなしの席の一品として使われます。道の駅たかのでも販売されていることがあります。そのお値段にビックリするかもしれませんが、庄原の文化を感じる食材ともいえる香茸です。もし「香茸ジェラート」を見かけたら、

あなたの人生でも稀有な体験になると思いますので、ぜひお試しください。

 それにしてもジェラートだけで「食材の宝庫、庄原」を見せつけられたような気分。それはとっても甘くて美味しくて楽しい気分。訪れたら、「後味の良い」思い出になること間違いなしです。

たかのキッチン

店舗情報

店名 たかのキッチン(道の駅たかの)
住所 広島県庄原市高野町下門田49
電話番号 0824-86-3131
営業時間 9:00~18:00(6月~8月は~19:00)
※変更することがあります。
定休日 第2・4水曜日(不定期)、年末年始
ホームページ https://www.takanoyama.jp/facility/kitchen.php

取材・文/平山友美