庄原そば

そば処みのり

特集記事

手打ちそばは材料が7割!
ソバの実栽培からそば粉まで。粉が良ければ16分

【店主の丸亀実朋さん。長野県でそば打ちを学び、世羅町での経験を経て現在庄原で開業】 ※撮影時のみマスクを外しています。

「普通ね、そばを打つ人って打ち方の話ばっかりするけれど、僕は7割が材料だと思うんです。僕の技術は、たった3割の手助けをしているだけ。」
そう話すのは、そば処みのりの店主、丸亀実朋さん。
 農産物としてのソバを作る生産者でもあり、比和町産のそば粉を販売する人でもあり、自分の店でそばを打つ職人さんでもあります。

「そば処みのり」を開いて9年目(2021年現在)という丸亀さん。比和町でソバを作ろうかという話があったとき、
「普通のソバを作ったんじゃ、ダメよね。面白くない!」と思ったそうです。なぜかというと、ソバ(乾燥子実)は北海道が一大産地、国内全収穫量の47%を占めています。2位は長野県で、なんと7%です。(令和元年農林水産省統計部の資料に基づく)丸亀さんは、広島で普通のソバを作ったのでは、誰も買ってくれないだろうと思ったのです。
 品質が良いことはもちろんですが、何か特徴的なソバが作れないだろうか、そう考えたとき、福井県の「早刈り」を思い出しました。早刈りとは、その名の通り、通常よりも早い時期に収穫することです。ソバの実がまだ未熟な緑色の頃に収穫します。打ったそばの色が美しいもえぎ色で、一部のそば屋さんには好まれていました。
 そういう情報はあったものの、自分で栽培するのは初めてだった丸亀さん。
「誰も教えてくれないから、まだ葉っぱが青いうちに『刈っちゃいましょう!責任は僕が取りますから。』って言っちゃったんです。」
 実際に製粉所に持ち込んだところ、注文が殺到したのだそう。広島県内ではなかなか理解してもらえなかったけれど、他県ではかなり高い評価を得られたのです。
 
「早刈りすることで、見た目のインパクトもあるし、食べたときの風味も良い。完熟とは違って若い感じ。青臭いんだけど、そこがすごくイイ!」
手ごたえを感じた丸亀さんは、積極的に比和町で作ってもらうことにしました。でも農家さんはこれまで完熟してから刈るのが当たり前でした。未熟な実は水分量も多く、コンバインが詰まってしまう、乾燥に時間がかかるなど、農家にとっては面倒な作業が増えるだけ。
「売る側からしたら、これほどインパクトのあるものはないと思うのに、作る側には悪いことばっかりで、なかなか早刈りをしてもらえなかったんです。」

【小粒できれい! これが幻の比和町産の早刈りソバ】

「それをどうやって理解してもらえたのですか?」

「まずは、ちゃんと成分検査に出したんです。」

ソバの実は熟成するにつれ、デンプン含有量が増えていきます。デンプン質に変わると、そばにしたときに切れやすくなるのだそう。未熟な実は、デンプン含有量が低く、反対にタンパク質量が多い。これは十割でもしっかりつながるそば粉になることを意味しています。
エビデンスがあれば、そば屋さんにも十割でつながる理由を説明できる!
製粉所の人にも「これなら売れます」と言ってもらえるようになりました。

それから丸亀さんは一人の生産者として栽培も手掛けるようになりました。
「ソバはどうやって成長するんだろう。」
朝早く圃場に行って観察すると、ソバは、日が昇ったら開花して日が暮れると花を閉じることが分かりました。
「だからハチも朝の方がよく飛んでいるんだな……。」
自分で体験しながら、ソバ作りを学んでいきました。

こうした積み重ねで、ようやく全国にも誇れる比和町産のそば粉を作りあげることができたのです。

【左が二八そば、右が十割そば。つゆを付けないで食べ比べると、味の違いが明らか】

ここまで聞いたら、絶対、十割そばを食べたいでしょう?
もちろん、二八そばも丸亀さんが厳選したそば粉を使うので魅力なんですが。

この十割そば…… 十割と思えないです!
正直、十割そばってもうちょっとボソボソしているイメージがあったんですよね。それがここのはツルツルとした食感ですね。このつながる感じが比和町産のそば粉の力なんでしょうか。
「そば粉はもちろん大事です。あとは手早く打つんですよ。練り始めから掃除するまで20分くらいです。」
「えぇっ? 20分で片付けまで終わってる?」
「打ち終わるまでだったら、準備して打って…16分くらいかな。」
そばを打つときに、もたもたしていると乾燥してきて、最初に決めた水の量が変わってきたりするため、短時間で打つこともコツなんだそう。

【店内入って正面にそば打ち場がある。その日に使用したそば粉の産地を明記。十割そばは庄原市比和町産で作る】

【衣サクサクの天ぷらも一緒に。そばは二八、十割のどちらか選ぶことができる】

【季節限定の広島牡蠣のせいろそば。大粒の牡蠣には薄衣が付いているのでつゆによく絡む】

つゆは広島にしては、しょう油の味がしっかりした強めの味です。これは丸亀さんの打つ信州系のそばにはピッタリ。自家製の返しをベースに3種の鰹節、広島県産のしょう油を使っています。こだわっているのは、原料のそば粉だけと言いながら、どれもこれもこだわっていらっしゃるではありませんか!

「基本的にほかでやってないことをしないとって思うんですよね。」

例えば牡蠣せいろ。片栗粉をまぶしてあんにすることで牡蠣特有の苦み、渋味が感じにくくなります。

せっかくなので温かいそばもいただいてみたい!

【鴨南蛮そば。鴨肉は一度表面を焼いてワインと一緒に低温で煮込む】

お話を聞くうちにすっかり丸亀ワールドにハマりこんでしまいました。
丸亀さん、そば屋の店主というより、そば打ち職人というより、ものづくり職人といった印象です。
ソバは農産物なので当然、出来の良い年とそうでない年があります。でも丸亀さんは出来が悪いものは出荷しないと断言します。

「モノを作る中で最初の段階で間違ったら、もう売れない。一度悪いものを出してしまったら二度目はないんです。」

決して妥協はしない、だから一回一回を真剣にやる、これが丸亀流。そしてここまで真摯に取り組めるのは、自分のためではなく、農家の収入に関わることだからという丸亀さんの言葉に、ものすごい地域愛を感じたのでした。

店舗情報

店名 そば処 みのり
住所 広島県庄原市七塚町59-1
電話番号 0824-74-1128
営業時間 【土・日・祝】 11:00~20:00 (L.O.19:30)
【月・木~金】 17:00~20:00 (L.O.19:30)
【月・火・木~金】 ランチ 11:00~14:30
定休日 毎週水曜日
ホームページ https://y780900.gorp.jp/

取材・文/平山友美